ハス
2017.01.19(木)
最近風邪をひいたことで、仕事中にもマスクをつけていることが多かった。
受付業務もあるので、マスクをしたままだと、患者さんに声も届きにくい。その為、少し大きめの声で応対するようにしていた。また、特に気を付けたのは目だ。患者さんからは目だけしか見えないので、なるべく大げさに笑顔をつくるようにしていた。
そうしていて、昔出会った歯科医師のことを思い出した。
それは、私がまだ20代前半の頃に勤めていた歯科医院でのことだった。
その歯科医院は、毎日の患者数が100名を超えるような状態だった。大学を卒業したばかりのドクターも多くいて、その中の一人の先生の言葉に、当時とても驚いたことがあった。
それは患者さんに対する笑顔を、どう見せるかということだった。ドクターは大抵ずっとマスクで顔が覆われている。当時はまだ衛生士や助手まではマスクをするような習慣は無かったので、治療中にそんなことを考えてマスクの中で笑顔を作っているドクターの考え方が、とても立派に思えたのだった。
一方、一日中マスクをつけて仕事をした経験が無い私が、もう一つ気が付いたこともある。
それは何か嫌なことを言われたり、むっとしたりしても、表情が隠せるということだ。相手に表情が知られないというのは、とても楽なことだ。目だけしか出していないというのは、こんなにも楽なことなのだと、初めて知った。
隠すことが簡単なマスクは、それだけに
「マスクの下でも笑っていますよ」
と、相手に印象付けるのは難しいことだ。
だが、若かりし日のあの先生のように出来たらいいなと、少し懐かしい気持ちで数日を過ごしていた。